どこの支援学校のホームページを見ても、大抵、小中高の縦の連携を重視していますなどと書かれている。
でも、実際は難しい。そして学部同士の仲は大抵悪い。後の学部は、「前の学部の指導が悪かったから…」と言って批判するし、前の学部は「後の学部が自分たちのしてきたことを積み上げていない!」と言って批判する。
僕自身は中学部と高等部どちらにも所属したことがあるし、なんなら幼稚部や小学部、高等部専攻科(理療科)や寄宿舎にも仲のいい人がいるので話す機会は多い。
そこで感じるのは、一貫した指導の難しさである。
個人的にはこう考えている。
小学部までは持てる力をどんどん伸ばす時期
中学部は見極めの時期
高等部は卒業後の進路のこともあるので、自分の現時点の能力でどうやり繰りしていくのかを具体的に考えていく時期
つまり、見ている先がそれぞれ違うのだ。
小学部の先生は学習能力をどう伸ばすのかということを一番意識する。
でも高等部の段階では、買い物で暗算が実用レベルでないのなら、スマホの電卓を使おうと考える。
また日常生活や作業、コミュニケーションなど仕事につながる力を伸ばすのは高等部からと考えている人も多いが、高等部からはじめたのでは大抵間に合わないと高等部の教員の多くは思っている。
学習の定着に時間のかかる子たちは、大抵、身の回りのことを身につけ、社会性を伸ばしていくのにも時間がかかる。
そして、高等部卒業時点から、就労してもその子の実態はそんなに大きく変わらないという現実もある。
もちろん教科の学習が必要ない訳ではない。読み書き計算や目と手の協応、概念の理解、学習経験の積み重ねが十分でないままに、身の回りのことや社会性の学習を強引に進めることは近道のようで遠回りになってしまう。
また教科の学習でできるようになった経験やそのサイクルは、それ以外でも新たなスキルを獲得するのに励みにもなるし、見通しを持って取り組めることにもなる。
問題はどの時点でシフトチェンジしていくのか、また教科学習などで、先を意識した取り組みができているのか、ということだ。
特に中学部というのはすごく難しい時期だと思う。教科学習を求めるのか、自立活動を求めるのか、子どもの実態に合わせて見極めなければならない。シフトチェンジしていく時期だと思う。
でも一体誰が、その子のこれから先の学習の伸びしろがわかるというのだろうか。
また高等部卒業後の進路で求められる力を、自分の言葉として話さなければ、子どもや保護者には伝わらない。
本人と保護者、あるいは教員が高等部卒業後の進路先に対する知識がなければならない。
またそれまでと方針を変えることや、見極める中で子どものできるできないわシビアに伝えることは大変だ。正直先送りしたいと思う方もいるだろう。
高等部までいけば簡単だ。なぜならリアルな進路と3年間という制限時間を子どもも保護者も受け入れざるを得ないからだ。
また小学部は本人、保護者が周りの同年代の子どもと同じ教育をという想いが強いし、伸ばせる力を伸ばすのは何も間違ったことではないので特に方針に関して意見が出ることは少ない。
でも、先のことを意識しているかどうかで変わってくる部分は多いと思う。
キャリア教育という言葉が広がって久しい。
子どもによって最終的なゴールは異なる。
以前のブログ子どもの目指すべきゴールは何か「目指すべきは自律と自立」 - メガネくんのブログでも書いたが、子どもの伸びしろはわからないけど、ゴールをどこかに設定しないといけない。
先のことはわからない。
でもわからないままでいれば後悔するかもしれない。
支援者は子どもに関わるその期間やそれまでだけに目がいきがちだけど、それだけでなく、その先の長い人生のために何が必要かも考えるのが大事だと思います。
学校を出てからの方が人生は長いし、いずれ来るかもしれない保護者が亡くなった先の人生を歩いていくのはその子自身なのだから。