本の感想。
という本を読んだ。
最近よく耳にする「非認知能力」について具体的にどんな力を指すのか、その力がどうやって育まれる/あるいは失われるのかを紹介している本だ。
本の中で印象に残ったのが有名なマシュマロ実験に代表されるように、今目の前の報酬に飛びつく子と、先の利益を考えて待つことができる子の違いはなんなのかという話だ。
5分先に増えるマシュマロを待てない子、イコール今この瞬間に生きている子、見つけた目の前の利益を熟す前に収穫してしまう子は、実は、経済的な理由で充分に満たされてこなかった、他者が信用できない環境ですぐに自分の利益を確保せざるを得ない…そんな背景が見られるということだ。
自分が持っているものをこの先に奪われるかもしれない、普段から満たされていないからこそ、手にした瞬間にすぐに消費してしまう。それは彼らの生存戦略故の結果だという。
それと親切について。
意外なことだったが、身近な存在から、知らない存在に親切行為が広がっていくのではないそうだ。幼い子は誰に対しても、見知らぬ他人に対しても親切な行動をする。それが、徐々に親切にしない対象(例えば自分に対して意地悪をしてきた相手など)が増えていくのだとか。
僕は支援学校で働いている。
今まで出会ってきた子たちには、今、この瞬間を生きている子たちや、自分のことが一番で「相手のきもちを考えよう」と繰り返し言われてきた子たちがたくさんいる。
彼らが生きていく上で役立つようなスキルを身につけるという視点で関わってきた場面がたくさんある。
彼ら自身の認知や発達の課題だと考えていたのだが、振り返ってみると、家庭環境に思い当たる部分もある。
子どもだけへの関わりで完結してはいけないということが実感としてもわかってくる。
実行機能を高めて目の前のご飯をがまんできるようになることで、むしろ生命が脅かされることもあるかもしれません。向社会的行動ができるようになることで、自分の状況を顧みずに他者を優先させてしまうのも困りものです。
つまり、支援しなければならないのは、子どもの能力だけではなく、周りの環境であるということになります。子どもが未来を選ぶ選択ができるようになったときに、その選択が報われるような環境を設計してあげることが必要になります。
それは、子どもの能力への支援は、家庭などの環境とセットで考えていかなければいけないという、障がいの社会モデルに行きつく。
未来へ向かう力は、他者への信頼がベースになるという。だから、子どもが信頼できる養育者との関わりをすべきことや、安心、安全を感じられる場を用意することがすべての前提になるのだ。
本書の中ではモンテッソーリ教育や心の道具プログラムなど個々のプログラムよりも、クラスの雰囲気や先生の関わり方の方が実行能力に大きな影響を与えることも記されていた。
むしろ実行機能などにとって大事だったのは、クラスの情動的な雰囲気や先生の指示の仕方でした。先生のポジティブな声色とか、子どもがお互いに承認し合うかどうか、先生の指示が上手か、などが実行機能などとかかわっていることが示されています。
こういう結果をみると、特定のプログラムが大事というよりは、教師や保育士と子どもとの関係性や、クラスの雰囲気などが大事であることがうかがえます。」
安心安全や信頼が全てのベースになる。
そんな環境が家庭でも、学校でも目の前の子どもたちにとって当たり前であってほしいなぁ。