本の感想。
『ほめて伸ばすコーチング(林 壮一)」という本を読んだ。
僕自身も小学校からミニバスをやってきた。
小学校でも中学校でも県内トップクラスの実力だった。
毎日遅くまで練習があったし、土日はもちろん、休みは盆と正月くらい。
県外の大会への遠征もよくあった。
もちろん体罰もちろんあった。
部活動について「なぜ僕たちは勝てなかったのか」 - メガネくんのブログ
この本は、アメリカで生まれ育ちバスケットボールにどっぷり浸かった著者の息子が日本へ渡り、ミニバスの悪しき洗礼を受けて憧れであったはずのバスケットボールから離れてしまうというストーリーから始まる。
殴られながら練習をしていた当時は当たり前と思っていた指導方法…でも今、支援学校という場で教員として働く僕にはその指導法は違和感しかない。
そして暴力や恐怖で統制されたチームや圧倒的な練習量のみを誇るチームは、強いかもしれないが、精神的な脆さや自分たちで考える力の不足といった弱さがあるのだろうと思う。
僕らのチームもそうだった。
印象に残った部分を引用する。
さすがにもうプロの世界では無いでしょうが、今でも暴力を持ち込む監督がたくさんいます。高校サッカーの現場で何度も目にしました。そういう指導者に言いたいのは、選手を殴ったり蹴ったりすれば、その子の技術が上がるのか? ということです。『シュートを外した子に監督が暴力を振るえば、次からシュートが決まるんですか?』『トラップをミスった子に蹴りを入れれば、その子は次からきちんとボールを納められるんですか?』。ミスをした原因を分からせ、課題を与えて練習させることが大事なんじゃないですか? こんな類の指導者と付き合っていたら、選手たちはサッカーが嫌いになってしまいます。日本の子供たちはミスをすると、試合に出られなくなる。シュートを外したら怒られると、大人の顔色を伺いながらサッカーをしています。
「大学を卒業して、しばらく経ちますから、授業内容を鮮明に記憶しているわけではないのですが、今、僕が働いているメジャーリーグ・サッカーの世界に『サンドイッチ理論』という考え方があります。選手の良い部分を見付けてから、アプローチする方法です。
まずはその選手に対して肯定的なことを話し、次に改善点を述べる。『あなたのこういう点が素晴らしい。でも、〇〇すれば、もっと良くなるよ。長所がよりいきるよ』というような感じですね。そして、さらにもう一度ほめて、ポジティブな状態でアドバイスを終わらせるというやり方です。『プラス、マイナス、プラス』でもっていくんです。僕は常にそれを心掛けています」
例えば、持って生まれた瞬発力がある一方で、技術的には荒く、腿裏の筋肉を痛めやすい選手がいたとする。北川が彼と接する際、まず口にするのは「あなたは素晴らしいスピードを持っているね」である。「十分速いけれど、フォームを少し改善すれば、もっと効率良く、楽に今のスピードを出せるかもしれないよ。そうすればハムストリングの負担も軽減されるかもしれないよ」と、走り方のフォームの改善案を伝えるのである。
「否定したらダメです。まずもってその人の可能性や、持っているものをほめることが大事だと僕は信じます。あなたはいいものを持っていますね、とか、恵まれているんだよと最初に告げることで、向こうも僕の言葉を聞こうとするじゃないですか。それから〇〇の動きをやってみようか? と提案するんですね。選手はいい気分にさせないと、課題を克服する作業に向かおうとしないものです。
アスレティックトレーナーだけでなく、いいコーチは、まず選手をほめてから、より良くするためにと、問題点を指摘する人が多いように感じます。人の粗を見たり、批判することって楽ですよね。その反面、人のいいところを探し続ける行為って、磨かないとできません。ですから僕が指導者を見る時、どのくらい選手をほかを一つの目安としています」
多分これらはスポーツだけでなく、人と人との関わりや教えるということ、教育でもそのまま当てはまることなのだろう。
部活動という点でみれば、僕たちは監督として関わる前に、一人の教員であるのならば、子どもたちがより良くなるようにどうすればいいのかを考えることを放棄してはいけないはずだ。
殴って人を動かす、そんなの誰だってできる。
プロとして働くのなら、それではいけないはずだ。
そして子どもたちが考えてプレイするためには、僕たち周りの大人が考え続けないといけないはずだ。
考えることを、試行錯誤することを放棄してはならない。
それと大人も一緒に楽しまないと。