昔、交通事故、ひき逃げの現場に遭遇したことがある。
そのときは周りにいた人たちと一緒に被害者の方を道路の脇に移動させた。
職場でやっている救急救命講習が役に立ち、意識の確認や呼吸の有無なんかも確認できた。
手分けして消防と警察に連絡した。
僕は警察を担当。
交差点や電信柱から確認した位置情報、被害者の容体などを比較的スムーズに伝えることができたと思う。
現場にいた人は被害者を一緒に助けた人、そばにいて声かけしていた人、到着した警察官からの聞き取りに答える人がいた。
一方で、早々にその場を離れる人もいた。
僕はその早々にその場を離れる人の気持ちがよくわかる。
なぜならその前に同じような経験をしていたからだ。
一度目はある乗り換えの駅に到着し、電車から降りたときのこと。
ホームで倒れている人がいた。
こんなときのために、毎年職場で救急救命講習を受けていたはずだ。
でも僕はその場を逃げるように離れ、言い訳するように駅員さんへ事情を説明し、AEDを持って行った方がいいことを伝えた。
確かに次の用事があった。
でも遅れてもなんとかなったはずだ。
どうすればいいのかわからなくて怖かったのだ。
とっさに動けなかった。
何のための講習だ。
恥ずかしかったし情けなかった。
なので、次に同じような場面に遭遇したときには動けるようにシミュレーションしてみた。
何かあったときには動くのだという心構えをもった。
そして2回目がやってきた。
乗っていた電車の中で倒れて痙攣している男性がいた。
次の駅のホームに到着し、周りの人と一緒に満員の電車から降ろした。
今思えばてんかん発作のようだったなと思うのだが、その場にいた看護師の方が大慌てで心臓マッサージをはじめられた。
2回目はなんとか動けた。
でも心臓マッサージをしていた看護師さんの隣に付いていただけだった。
そのうちに駅員さんが到着し、救急隊も到着し、男性は運ばれていった。
そして3回目が冒頭のひき逃げ事故だった。
何かあったときに動く心構えや備えのお陰で自分からスムーズに行動できた。
警察官の聞き取りは大変だったけども。
何事も備えておくことが大事だ。
今回の事故対応だけではない。
白杖をついて歩いている方に声をかけ、手引きすることも
倒れた自転車を立て直す手伝いをするときも
街や駅で迷っている感じの海外からの旅行者に声をかけるときも
最初は何もできなかった。
でも備えること、そして実際に体験することで、だんだんスムーズに動けるようになってきた。
世の中にはとっさのときにすぐに動ける人もいるのだろう。
でも僕は無理なので、頭の中でシミュレーションし、心構えを持って備える。
その原動になるのは、あの時に動けなかった自分への後悔だ。
何度も後悔したくないから。
その失敗を次に活かせたなら、失敗は失敗でなく、貴重な次への経験になる。
そんな風に考える。