メガネくんのブログ

何となく日々思ったことを書いていくブログです。教育や本の感想なんかも書いてます。表紙の画像は大体ネタです。

コミュニケーション能力と知識を学んでいくための知識と技能

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本の感想。

 

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち(新井 紀子)』という本の感想 その2。

AIは万能ではないのだけれども非常に強力なライバルです。 - メガネくんのブログ

 

まずは前のブログで書いたように、AIには限界があり、得意なことと苦手なことがある、というか数字と論理と確立と統計で表せないことは限界がある。

中でも推論、イメージ同定、具体例同定は人間にとって有利な項目だ。

 「推論」は文の構造を理解した上で、生活体験や常識、さまざまな知識を総動員して文章の意味を理解する力です。「イメージ同定」は、文章と図形やグラフを比べて、内容が一致しているかどうかを認識する能力、「具体例同定」は定義を読んでそれと合致する具体例を認識する能力です。定義には、国語辞典的な定義と、数学的な定義の 2種類があります。推論、イメージ同定、具体例同定の 3つは、意味を理解しない A Iではまったく歯が立ちません。

 

A Iに代替されない人材とはどのような能力を持った人なのか…新井先生は「意味を理解する能力」と定義します。 A Iは意味を理解しないからです。

でも日本の大学生のほぼ全員が平均を計算で求めることはできるのですが、4人に1人は平均の意味を理解した問題を解くことができないというのです。

ある中学校の 3年生の生徒 1 0 0人の身長を測り、その平均を計算すると 1 6 3・ 5 ㎝になりました。この結果から確実に正しいと言えるのは、次のうちどれでしょう。

①身長が 1 6 3・ 5 ㎝よりも高い生徒と低い生徒は、それぞれ 50人ずついる。

② 1 0 0人の生徒全員の身長をたすと、 1 6 3・ 5 ㎝ × 1 0 0 = 1 6 3 5 0 ㎝になる。

③身長を 10 ㎝ごとに「 1 3 0 ㎝以上で 1 4 0 ㎝未満の生徒」「 1 4 0 ㎝以上で 1 5 0 ㎝未満の生徒」…というように区分けすると、「 1 6 0 ㎝以上で 1 7 0 ㎝未満の生徒」が最も多い。

 

公式は知っている、でも、意味はわかってないそんな姿が浮かんできます。

でもそれではAIと変わらない…どころか代替されてしまいかねないのです。

 

僕は支援学校という場で働いているので、その経験をそのまま一般校に当てはまる訳にはいかないのですが、新聞や教科書を読んで理解できない、意味がわからない子は増えているのではないかと思います。どころか、わからない、理解できないことに対して「俺はわからないから嫌いだ。だからやりたくない」というような返答を自信を持ってする子が増えているように感じます。

もちろんその言葉を字義通りにそのまま受け取るわけではありませんが、別の本を読んでいる中で、わからないことがあっても平気な子が増えているという内容がとても印象に残ります(僕自身が知らないことは気になってすぐにググってしまう人間なので、余計に気になるのですが)。

 

AIに対抗するためにコミュニケーション能力を…となることの危険性がここにあります。

僕の個人的なイメージで、知識というものは作品をつくる際の材料、レゴのブロックみたいなもので、ブロックがたくさんあればいい作品がつくれるのかというとそうではないのですが、ブロックの数が少ないとつくれるものに限度ができてしまうのです。

僕自身はアクティブラーニングが声高く叫ばれたときに職場の先輩とそういう話をしていたのですが、この本の中にもそんな危険性に対する描写がありました。

 もう一つ、思い当たることがあります。娘が小学校 4年生のときのことです。理科の授業で星の光について勉強したそうです。先生は「星は今光って見えるから、今輝いているように見えるかもしれないけれど、遠いところにある星の光が地球に届くまでには時間がかかります。だから、今、見ている星の光は何万年も前に輝いた光なのです」と説明しました。ついでに、 1年に光が進む長さを 1光年ということも勉強しました。

 クラスの生徒たちが「ふ~ん」とわかったようなわからないような微妙な反応を示しているときに、娘は先生に質問しました。「太陽はどうですか?」

 先生はちょっと困ったような表情をされたそうです。すると、場の空気を読むことに長けた男の子が、「ば~か、太陽の光はいま光ったに決まっとるじゃろ」と言ったのです。その大声を機にたくさんの生徒が口々に「そうじゃ、そうじゃ、太陽は今に決まっとる。さっきのは星の話や」と言い出し、結局、太陽は今光ったことに「決まった」そうです。もちろん、間違いです。太陽の発した光が地球に届くのには 8分ぐらいかかります。アクティブ・ラーニングはこんな危険性を孕んでいるのです。

 

だからこそ、読んだことや聞いたことを理解したり、わからないことを調べる力が必要になるのだと新井先生は語り、リーディングスキルテストという取組みを進められています。

その辺りは続きの本で詳しく知りたいなと思います。

 

僕たちはAIに対してどのように接するのか、AI技術が進化して隅々まで広がった社会の中で、人間はどうあるべきなのか。