メガネくんのブログ

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『大本営発表』嘘をつくこと

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人はなぜ嘘をつくのだろうか。

1つは自分が利益を得るために(自分の信頼を守るためも含む)。

2つは他者を騙す快楽のために。

3つは意図せず、事実と自分の知識や考えが異なっているために。

 

 

思いつくのは、この3つくらいだろうか。

大本営発表(辻田真佐憲)」を読んでいて思ったこと。

大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争 (幻冬舎新書)

大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争 (幻冬舎新書)

 

 

 

①信頼感がないと嘘は成立しないということ。大本営発表も初期には自らの失敗を認め、戦果を下方修正するなど正確な報道を心がけていたため、しばらくは嘘を重ねても、そのブランドで信頼されていた。

②事実関係を把握できていないと意図しない嘘になってしまう。日本軍の情報軽視、精神論が陥りがちな部分だ。特に、ベテランパイロットか死亡していくと、皆思い思いに撃墜方向をし、上層部の意向でそれをなかったことにできなかったため、沈めたはずの戦艦と何度も戦うことになり、結果として嘘をつき続けざるをえなくなった。

③事実とこちらの発表がズレてくると、修正が必要になるが、自身の過ちをなかなか訂正できないということ。組織で、発表する部署に権限がなく、上層部の決裁が必要になるならなおのこと。必ず上の意図が反映させられることになる。

④嘘を誤魔化すためには相手をプロパガンダと批判せざるを得なくなってくる。自分の嘘を認めることができないので、信頼の高い自分と信頼性のない相手のように対比を刷り込むようにならざるをえなくなるのだ。

⑤否定的な言葉は言い換えられる。全滅は玉砕に、撤退は転進に。また具体的な数字も誤魔化されるし、曖昧な言葉を選んだり、他のニュースで隠そうとする。

⑥嘘を嘘と批判する空気が必要。新聞などのマスメディアと軍上層部の癒着が大きかった。戦後は反対に振り切れ、政府を批判するために嘘でもないのに嘘をつくる風潮もあるのではないかと思う。正確な情報とは何かと考えさせられる。

⑦嘘に嘘を重ねると信頼がなくなるが、当人はそのことに気づかない。軍上層部は、国民が疑惑の目を向けているのにも関わらず、大本営発表のブランドを信頼していた。嘘をつき続けていると感覚が麻痺してくるのだ。

 

 

日本は前の戦争から変わったのだろうか。

大本営発表(辻田真佐憲)」を読んでみて、表向きは変わったけれど、日本の個人や組織の本質はあまり変わってないように思う。

この本を読んでみて、情報の軽視(統計的な根拠がない、数値のない合間な目標が多い)や嘘を嘘で塗り固めて行かざるを得ない不幸の重なり(粉飾決算などにも通じるものがある)、上層部同士の思惑によって、「自然なところに落ち着く」妥協の産物としての結論(職場の会議でもよく目にする)、所属した個人の責任にするところ(組織の構造の問題にはならない、汚職でも誰かが自殺すればそれで終了)など、日本全体の風潮や空気感はほとんど変わってないんじゃないかと思う。

特に情報の軽視や個人の責任追及は、個人の責任だけの問題ではなく(実際、大本営発表の責任者も上層部の圧力や上層部同士の軋轢、曖昧な情報と現実のギャップに苦しみ、新聞社から矛盾を指摘される中間管理職の苦しみを味わっている)、組織としての構造問題でもあるはずだ。

「失敗の本質(戸部良一他)」「失敗の本質(戸部良一)」 http://amazon.jp/dp/4122018331/ を読んだときにも思ったけど、戦前の日本が悪かっただけで、今は大丈夫と言った、個人や時代に責任を押し付ける安易な思考はやめて、何が原因でどうするべきだったのか、今の時代ではどうなっているのかを考える必要があるんだと思う。

過去の話ではなく、今現在にも通じる話だ。