今週のお題は「好きな漫画」ということで、まずはスラムダンクから。
僕は小学生の頃からミニバスをしていた。
キャプテン翼は、少年たちを複雑怪奇な技の迷路に迷い込ませ、タイガーシュートやカミソリシュート、スカイラブハリケーンや顔面ブロック、反動蹴速迅砲などの習得に明け暮れた挙句、日本サッカー会は10年を無駄にしたという。
我らがスラムダンクはそんなことはなく、バスケ少年だった僕らは、ZARDを聴きながら、刈り上げた坊主頭で地道な練習に日々邁進していた。
もちろん漫画もアニメにもどっぷり浸かり、古今東西スラムダンクのキャラでは、嘘か真か、審判の名前をズボンから見つけだすヤツもいた。
中学、高校とバスケを続けたし、中学時代、全国出場をかけた試合前には、監督が「がけっぷち」と書いた垂れ幕を用意していた。
大学時代もスラムダンク世代の友人に囲まれ、サウナに行けばタオルを頭にかけて「試合はまだですか 監督!!」と発言し、スマブラで相手をリタイアさせたときは、「ボボォン!」「どんどんどんどん入れまっせェ!!」と煽りまくっていた。
大学祭のスラムダンクマニアッククイズ大会に参加し、11月の寒空の下、友人が描いてくれた湘北ユニフォーム風のタンクトップを着た翌日、熱を出したのはいい思い出だ笑
だがこちらは自分の無知を恥じるしかなかった。
客席の最前列には、誕生日プレゼントにジョジョ全巻買ってもらったという女子学生など濃ゆすぎる面々が並び(彼らが参加すれば良かったのだ)、問題もただの人物名やスタンド名、台詞などというチャチなものじゃなく、「レッド・ホット・チリ・ペッパーこと音石明のギターの素材は?(答えはマホガニー)」なとマニアック過ぎるものであった。
登場場面では、ワムウのモード神砂嵐で観客をつかんだ僕も、この難易度にはついていけず、素数を数えて心を落ち着けたり(素数はいつもわたしの心を落ち着けてくれる)、カーズのポーズで考えるのをやめるくらいしかできなかった。惨敗だ。
大学時代と言えば、毎週、月曜はジャンプとヤングマガジンとスピリッツ、火曜日はプレイボール、水曜日はサンデーとマガジン、木曜日はチャンピオンとヤングチャンピオン、金曜日はコミックバンチ、それに月刊ジャンプと月刊マガジンとヤングアニマルも読んでいた。いや立ち読みしていた。あの立ち読みしていた大学前のローソンがもうないのは少し寂しい気分になる。
高校時代に、コンビニで立ち読みしているときに隣で同じく立ち読みしているサラリーマンには本の奪い合いになることもあり、「買えよ!」と内心苛立ちを覚えていた。
だが三十を過ぎた僕は未だに立ち読みをしている(買っているものもあるが)。人の人生はわからないものだ。
最後に忘れてはいけないのが、格闘技漫画の皮をかぶったギャグ漫画、刃牙だ。
毎週木曜になると、サークルの部室にスマブラをしに集まってくる友人にその号の内容をネタバレする。
ちょうど死刑囚編や大擂台賽編の頃であり、走って水を渡る、私は一向に構わん、はいーッ、毒が裏返るなどの名言、名場面で溢れていた。
なかなかこのくらいのレベル(漫画という底なし沼の入り口レベル)の話をできる人は少ないものだと、社会人になってから気付いた。
ジョジョ知ってますという子と話をしても全然伝わらないのだ。
大学の友人と集まっても、皆仕事や子ども、嫁との軋轢の話が多くなった。
でも一度、漫画の話をはじめると、あの黄金の時間が戻ってくる。
漫画の話に終わりはない。
漫画には時間を超え、距離を超え、人と人を繋ぐ力がある。