本の感想。
「フランス人は10着しか服を持たない(ジェニファー・L.スコット/神崎朗子)」 という本を読んだ。
タイトルからはフランス流生活術の話かと思っていた。確かに表題のワードローブを10着にするとかの生活上の実践が語られる。
モノを片付ける場所を決めておくとか、
必要以上にモノを買わないとか、
スーパーでまとめ買いじゃなくいろんなお店を回って買い物するとか、
食事をするときは味わいながら楽しく語り合いながらを心がけるとか、
自分に似合うメイクとか姿勢とか髪型とか香水を心がけるとか、
家を出る前に鏡の前で全身をチェックするとか、
一番いいモノを大事にとっておくんじゃなく毎日使うとか、
プライベートのことじゃなくてアートや哲学やイベントなどの話をしてミステリアスな雰囲気をまとうとか
でも大事なのはその生活術なのではない。
筆者は学生時代にパリに留学し、そのホームステイ先のマダム・シックとその一家の生活からこの生活術を学ぶ。
そして故郷のカリフォルニアに帰り、元のアメリカ式の怠惰な生活に戻ってしまってから、このマダム・シックの教えを思い出し、実践し始める。
すると気づくのだ、食事を味わうことに、路地裏あった知らなかったお店に、自分のスタイルにあわせたモノを身に纏うことに、つまり、日々の何でもないことを楽しみながら自分らしく生活することに。
日々の何気ないことを楽しむ。
言葉にするのは簡単だけれども、なかなか難しい。
日々繰り返すこと、仕事や家事なんかは「作業」になってしまいがちだし、本当に考えてから行かないと「本当は必要ないもの」をたくさん抱えて買い物から帰るだろう。
でも、この本はいくつかのことを示唆してくれている。
服を10着しか持たないことが大事なのではなく、本当にお気に入りの服を10着揃えることが大事なのだ。そうしたら、毎朝の服選びが、作業から楽しみに変わる。本当に大事なものに囲まれて毎日を過ごす、そのためには自分に合うモノを選ぶことも必要だ。
マダムがイチゴのタルトをつくるときに、適当にイチゴを並べた筆者を嗜め、きちんと向きを揃えて並べるよう伝える場面がある。食べるために仕方なく料理をつくるのではない、食事を味わい、楽しむために、こだわりをもってつくる。それが楽しむことにつながる。
この本を読んで、ふと考える、自分は毎日のしていることを作業にしてはいないだろうか。
そうなっている部分もあるし、そうでない部分もある。
でもひたすら玉ねぎを飴色まで炒めてからカレーをつくるときのように、ローストビーフをつくるときのように、楽しんで料理をする楽しみを思い出す。
スマホをいじりながら子どもたちに「パパ」と呼ばれるのではなく、一緒に公園を駆け回り、その表情や仕草、動きを噛みしめているときを思い出す。
そう、僕も自己流の日々の生活を楽しむ術を持っている。それを忘れないようにしよう。
邦題は「フランス人は10着しか服を持たない」だけど、原題は「Lesson from MADAME CHIC」…誰がこんな題名にしたんだとの想いが拭えない。
最後にもう一度言うが、この本はただの生活術ではなく、日々の生活を楽しむための教えが詰まった本なのだ。