メガネくんのブログ

何となく日々思ったことを書いていくブログです。教育や本の感想なんかも書いてます。表紙の画像は大体ネタです。

相手の気持ちを考えなさいという意外と無理難題

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子ども同士のトラブルのとき、よく「相手の気持ちを考えなさい」という言葉をよく聞く。

でもよくよく考えてみて、僕たちは自分でない他者の気持ちをどこまで理解することができるのだろうか。

 

ある本を読んでいて「相手の気持ちを考えるってやっぱり難しいよな」と思った。

本の中で紹介されていたある場面はこんな内容だ。

 B君が小さい頃から大切に飼っていた犬が事故で死んでしまいました。兄弟のいないB君には大切な存在でした。B君はすっかり落ち込んでいました。そこにA君がニコニコしながら近づいてきました。

A君「飼っていた犬が死んだって?また買えばいいんじゃない?同じような犬があのペットショップで売っていたよ」

B君はムッとして黙りましたが、A君はいいことを教えてあげた、B君も喜んだかなと思って嬉しくなりました。

 

この本でも説明されているけど、「もっと相手の気持ちを考えなさい」という言葉に対して、逆に「どの程度までその子は人の気持ちがわかるのだろうか」を考えておかないと、適切な指導でなくなるかもしれない。

 

本では、気持ちがわかるレベルの3つの段階が示されている。

①相手の表情が読める、B君の表情に気がつき(関心が持て)、「あ、B君、悲しんでいる」とわかる段階

②相手の立場に立てる、「大切にしていた犬が死んだのだからきっと悲しい気持ちだろうな」とB君の表情以外の情報や状況を使ってB君の気持ちを察する段階

③相手に共感できる、「B君は兄弟がいなかったから、犬を弟のように可愛がっていたな。ひょっとして仲の良かった弟が死んだくらいつらいのでは?」など、本人の置かれた状況の背景まで想像してB君の気持ちを理解する段階

 

この想像して共感するというのはとても難しくて、僕自身もできているのかどうかわからなくなることもある笑

 

気持ちの勉強をするときに子どもたちと話すのだけれど、みんな気持ち(こころ)って知ってる?と聞くと「うん」と即答される。じゃあ、それはどこにあるの?と聞くと「あたま」や「むね」を指差す。じゃあ、それを見たことある?と聞くとみんな首を振り、触ったことある?ツルツルしてるの?それともザラザラ?かたさは?においは?甘いの?辛いの?この辺りで子どもたちは笑いだす。

でも考えてみると、見えないし、聞こえないし、触らないし、匂いも味もしないし、なんだったらどこにあるのかもわからないのに、ほとんどの人が「ある」と断言できるこころってとっても不思議だ。

そしてそのこころは誰もが持っているはずなのに、みんなそれぞれ違う。

同じものに対して、「好きだ」と思う人がいれば、「嫌だ、嫌いだ」「別に興味ない」という人もいる。好きや嫌いの度合いも人それぞれだ。なのに、みんな「同じこころや気持ちを持っている」と考えるのが難しい。頭で理解できたとしても、実際に納得するのはすごく難しい。

 

僕が関わる子どもたちには、そんな段階の前に、それぞれの特性や経験不足から、自分の気持ちを認識できていなかったり、自分と他人の感覚や考え方、価値観が異なるということを知らなかったりする(それは幼児期の子どもも同じなんだけれど)。

 

なので「相手の気持ちを考えなさい」という言葉は、『相手の気持ちを考えられる段階まで達している』子に使うべきであって、そうでない子に対しては、それ以前の段階から確認していく必要がある。

相手に気持ちを考えろと言っている立場の僕たちが、みんな相手の気持ちを考えることができるという間違った前提に立って、自分が本当に相手の気持ちを考えることを怠っているのかもしれない。

だからこの言葉は使い方に気をつけないといけない。

もちろん、相手の気持ちがわかるだけでもだめなんだけれども。