給食指導についての話。
僕は好き嫌いが多い方だ。
辛いもの、苦いもの、ネバネバしたもの、生もの、貝類、エビ、カニなどなど。
辛いものや納豆以外のネバネバなど大人になってから克服したものはあるにはある。
中でも赤くてクニャクニャのアイツ、そう「エビ」が一番苦手だ。いや憎んでいると言ってもいい。(批判されると思うが、消しゴムみたいな食感だと個人的には思っている)。
小学校の時には給食でエビに相当苦労した。
食べれば高確率で嘔吐した。
そして自分でその処理をした(させられた)。
なのでアイツの出てくるときは、ピーカーブースタイルのごとく机にはいつくばり、みんなが掃除している間ずっと耐え続け、しのいでいた。
6年生のときは最悪だった。
当時の担任は好き嫌いを容認しない派だった。いや、当時の世間自体が「好き嫌いをなくすため」に、無理やり食べさせることを肯定していた。そんな時代だった。
特に最悪だったのは、「今日は、メガネくんがエビを食べ終わるまで6年◯組は休み時間なしです」と通告されたときだ。クラス中から、「食べろ!食べろ!」の大合唱に追い込まれた僕は、エビチリを同じ班の子に投げ捨て、こっぴどく叱られた。
理不尽だった。
中学校からは弁当になり、高校時代の北海道修学旅行のカニ飯も、保健室の先生と交渉し、アレルギーということで別メニューに替えてもらった。
プライベートでもエビは一切食べなかった。
執拗にエビを刻み込んで隠す、あるいはエビシューマイを普通のシューマイと誤魔化す(本当にわかってなかったのかも)、母親に対しても対抗した。赤いものがカケラでも見えると疑い、ほじくり出し、「ほらエビだ」と突きつけた。
家族はエビやカニが大好きだった。僕は家族の誕生日祝いをするエビカニ料理のお店では、皆が焼きガニやカニグラタンなどをむさぼる中、サラダバーと唐揚げ、ポテトでしのいでいた。
カップヌードルは好きだが、エビを捨ててからお湯を入れる派だ。
そんな僕が縁あって学校で働くことになった。小学校時代の思い出から「好き嫌いには寛容でありたい」と強く思っていた。
しかし、教員という立場で好き嫌いをしてもいいものか悩んでいた。
そして、教員になっての初めての給食。そのメニューは入学祝い献立で…エビフライカレーだった。
子どもたちは大喜び。
カレーだけでも嬉しいのに、エビフライが付いてくるのだ!!
でも、僕は喜んでいる子どもたちを尻目に嘆いた。
「なんで初日からエビなんだ」と。
悩んだ。
正直食べなくてもいいんじゃないかと思った。
でも、好き嫌いを克服できるよう頑張る姿を示したいと思った。
エビフライを口に運び、最低限咀嚼し(あの食感のひどいこと)、牛乳で必死に流し込んだ。
その日以来、給食では、エビを減らしてもらうことはあるが、必ず食べて(最低限の回数咀嚼し、牛乳で流し込んで)いる。
余談だが、翌日に相担任のベテランの先生が、「私お肉無理なのー」と普通に残していたときには、自分の選択を考え直すか心が揺れたのだが…。
もちろんプライベートでは一切エビを食べていない。僕にはエビを出さない妻には感謝の気持ちしかない。ちなみに妻と子どもはエビが好きだ。
何が言いたいのかというと、無理矢理食べさせることに意味はないし(トラウマになる子もいるし)、いずれ食べれるようになるかもしれないし(大人になれば味覚が変わるかもしれないし、僕のように使命感で乗り越える場合もあるだろう)、大体好き嫌いがあって何がいけないのかということだ。
なんでもでも食べろと言う人のほとんどは、自分が食べ物の好き嫌いがない人だ。
そんな人に、「イナゴ(バッタ)やチュンチュン焼き(雀の丸焼き)を食べろ」や「人の好き嫌いを絶対するな」と言うと、きっと怒り出すに違いない。
誰にもが人生で絶対に分かり合えない人と出会うだろう。
僕にとってそれがエビだっただけだ(もちろん分かり合えない人も沢山いる)。
僕は嫌いなものがある人は信頼できるし、何事にも寛容な人が多いと独善的に思っている。
逆に言えば、好き嫌いに対して寛容になれず、食べることを強制する人を僕は心の底からは信用できない。
なんでも好き嫌いなく食べられる。
誰とでも仲良くできる。
それは1つの理想だけど、その理想を万人に押し付けるのは如何なものなのか。
そこで寛容になれない人は信用できないし、何より同じような辛い想いを子どもたちにはさせたくない。なので、食べることを強制する教員と子どもの間には積極的に入り、フォローするようにしている。一応、自分が頑張っている姿は見せるのだが…。
そもそも、
苦手なものを無理矢理食べれてもあんまり得しないし。
「エビを食べれないなんて人生の半分を損してる」なんて言われたって、僕は心の中で、「あなたの人生の半分がエビだなんて、そんな人生…」と思ってるし。
なんだか好き嫌いに関しては想いが強いので、いつもより長くなってしまった。
そんな僕ですが、実は、かっぱえびせんは大好きです笑